どくどく記 〜読書と独学の記録〜

読んだ本の記録と、考えた事のアウトプット。

大作を読むコツ:『資本論』と『源氏物語』

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佐藤優氏の影響を受けて、マルクス『資本論』を読んでいる。

資本論 (1) (国民文庫 (25))

資本論 (1) (国民文庫 (25))

 

 

文庫サイズで8冊分もある大作だ。ただ長いだけではなく、難解な書物でもある。冒頭部分が特に難しく、気合十分に読み始めたのはいいが、すぐ困難にぶち当たって一度読むのをやめ、期間をおいて再度取り組み、同じところでまた挫折をし……ということを繰り返すうち、結局、第1部第1章を突破するのに2年くらいかかってしまった。

こんな調子で読み終わるのだろうか? と絶望しかけたが、しかし、マルクスは序文でこう書いている。「なにごとも初めが困難だということは、どの科学の場合にも言えることである。それゆえ、第一章、ことに商品の分析を含む節の理解は、最大の困難となるであろう」(同書、p.21)と。まさにその通りで、第2章以降は比較的スムーズに進んでいる。今は、2冊目前半の第11章に取り組んでいる。

  

『資本論』と言えば、一昔前の共産主義革命家にとってバイブルのような存在であった。そのような書物を読んでいるからと言って、別に革命を目指すわけではない。むしろ、保守思想の立場から、「ある特定の理論に基づいて社会をラディカルに変革する」というような志向にはそもそも批判的だ。

では、なぜ『資本論』を読むのか。

狙いは、現在の世界を基礎づけている資本主義社会の構造を理解することにある。僕の独学テーマでいうと「3.世界を把握する」として位置づけられる。

つまり、物理学を勉強して自然現象を理解したい、と思うのと全く同じように、『資本論』を読み、自分たちが生きている資本主義社会の構造を把握し、そこで生起する現象の背景を理解したい、と僕は思っている。

佐藤氏曰く、『資本論』が行った資本主義社会についての分析は、現代にも通用する本質的なものであり、同書は今なお読む価値のある古典であり続けている、とのこと。その主張を信用し、長い時間を投資して読むことにした。

 

大作を読むコツ

『資本論』のような大作は、とにかく挫折せずに読み続けるための工夫が必要だ。以前は、一気に読もうとして失敗した。そこで僕は、「毎日、決まった時間に少しずつ読む」というスタイルを採用した。具体的には、平日昼休みの30分を『資本論』の読解に充てている。

この方法は、「速度は遅いが確実に進める」という強みを持っている。例えばこれを「週末に2時間ずつ」にしてしまうと、前回読んでいたところを思い出すのに時間がかかる。思い出す労力が嫌になり、いつしか投げ出してしまうことになる。だが、前日に読んだ内容ならば、忘れない。無理なく進んでいける。

あと2年くらいかければ読み終わるだろう。ゴールが楽しみだ。

 

 

2 

そして最近、新たに別の大作に手をつけ始めた。紫式部『源氏物語』である。これは勉強のためではなく、単純に物語を楽しむための読書で、テーマでいうと「4.娯楽」に入る。*1

かねてより原文を素読していたのだが、内容も理解したいと思い、現代語訳を読むことにした。様々な訳本が出ているが、林望氏の訳を選んだ。

謹訳 源氏物語 一 改訂新修 (祥伝社文庫)

謹訳 源氏物語 一 改訂新修 (祥伝社文庫)

 

 

実は以前、瀬戸内寂聴訳を読んでみたことがある。しかし、翻訳にはありがちなことだが、どうも文体に違和感があって馴染めず、2冊目まで読んで飽きてしまった。

林望氏の訳文は、現代語として違和感がなく、読んでいて気持ちがいい。これなら最後まで読み通せるだろう。実際、読み始めてから1週間で、2冊目の半ばまで進んでいる。

 

祥伝社文庫版林望訳を気に入ったもう1つの理由が、「小見出し」の存在だ。他の訳書には、そのような気の利いたサポートはついていない。

まあ、原文には小見出しなんてないから、気に入らない人もいるかもしれないが、僕には好ましい。文章が切れ目なく続いていると、話のまとまりがわかりにくくなってしまう。小見出しがあると、話の筋を見失わないで済む。特に、突然状況が変わる場面で混乱しないのは大きい。小見出しによるサポートのおかげもあって、滞らずに読めているのだと思う。

ただし、これには致命的な弱点もある。初読の人にはネタバレになる、ということだ。特に「〜〜死す」なんて小見出しは、一発でその後の展開がわかってしまう。もっとも、『源氏物語』くらいの作品なら、漫画などで大まかなあらすじを知っている人は少なくないだろうから、そのような場合は問題なく小見出しを活用できるはずだ。

 

自分にとって読みやすいものを選ぶ。こんなことも、「大作を読むコツ」なのだと思う。

  

*1:このテーマでは長らく『ボヴァリー夫人』に取り組んでいたが、先日、ようやく読み終えた。『ナボコフの文学講義』を手引きとしたことで、非常に充実した読書経験ができた。